裁判の進捗状況


行政訴訟のダイジェスト

● 6月の第3回公判で、国は初めて騒音対策防止法3条1項にもとづき、大臣が離着陸時間を告示で指定できることは認めた。それまで国は、各航空機の航行や空港の運用については、民間の航空会社や成田空港会社がしていることで、離着陸時間の変更など、国の航空行政の権限が及ぶところではないと言い続けてきたのだ。この日初めてその点がくつがえされたのだが、基本的な主張は民間会社同士でしていること、夜間飛行時間などに、国の規制権限や責任は生じていない、差止めの訴えは空港会社だけにせよと国の関与を認めず、公訴却下の主張は変えなかった。  

● 8月27日(火)の第4回公判は、横芝光町○○○○さんの原告意見陳述のあと原告準備書面(4)の弁論が行われた。「空港自体が民営化されても、国土交通大臣は、民間航空機の運航について広範な規制権限を有している」と。航空機は国内線国際線を問わず、その1機1機ごとに、機種・航路・時間など運航計画の許可・(変更などの)認可・承認がなければ、国交省職員たる管制官の指示をうけての飛行・離着陸ができないのだ。同じ国交省管轄の鉄道で一本一本の許可が必要だろうか。高速道路で一台一台ごとの申請をしなければ進入もできないだろうか。国交大臣の航空行政権は1機1機に及び、それがなければ離着陸も上空飛行もできないという当たり前のことに気づかされた。   

● 11月15日(金)の第5回公判では、芝山町の原告○○○○さんの意見陳述に続き、原告準備書面(5)、A4104ページの口頭弁論が行われた。第1章「本件義務付け請求が認められなければならないこと」で、「原告らの被害は、日々発生しており、睡眠妨害による睡眠不足、昼間の活動の質の低下、他の身体的疾患やストレスなど、あとでは『損害の回復が困難である』ことと、『損害をさけるため他に適当な方法がないとき』に該当する」ことが強調された。 裁判長は次回公判(来年2月14日) で国が再反論、対する原告側書面提出という形で、入り口の法律論争いの決着を示唆した。いよいよ次々回(来年5月30日)からは「実態審理」に入れるか。期待しましょう。


民事訴訟のダイジェスト

● 第2回公判は、7月31日(水)。原告意見陳述は芝山町の○○○○さん。被告はA4紙88頁の準備書面(1)を提出。その大半を、成田空港の公共性=路線・便数の増大と空港拡張の経過にさき、ついで民家防音工事など「騒音対策」にどれだけ金を費やしているかを列挙した。その結論は「空港の運用時間及び航空機の離着陸の時間については『この事理を踏まえて理解されるべきものである』」。すなわち「公共性の増大」が絶対優位で、周辺住民の受忍限度は無制限だという暴論である。この暴論を着飾らせるために空港の必要性や公共性が延々と語られる。「成田市の騒音対策協議会でも私らは毎回毎回これを聞かされてきたんだ」と加藤原告団長が言う。もちろん、長い空港建設反対の闘いのなかでも、特にシンポジウム円卓会議以前では、こうした物言いがまかりとおっていた。「そんなことは百もわかっている。でも何でそのために、夜中まで眠れずに、朝も飛行機に起こされなくてはいけないのか。毎日毎日休みなしにだ。どこまで我慢しなければならないのか。少しは遠慮したらどうだ」という騒音下住民に、響く言葉は一言もない。百ページを超すこの主張に海渡弁護団長の一言、「薄っぺらな主張です」。   

● 第3回公判は、10月30日(水)。原告意見陳述は芝山町の○○○○さん。ついで、前回被告主張への全面的な反論が行われた。A4紙105頁。内容も夜間騒音規制基準や「受忍限度を画す重要な要素としての騒音実態と被害実態」と重要な論点ばかり。が、字数に限りがあるのでそれらは次回以降とし、今回は「第4原告らが受けている被害実態は受忍限度を大きく超えている」の「2、(1)被告が有するとする公共性は内在的に大きく制約されている」ことだけとする。「成田空港の公共性は、その開設とその後の歴史的経緯の特殊性から、空港運用の基本的施策を決定するうえでの空港周辺住民の参加を確保し、かつその運用にあたって住民への騒音被害等の発生を防止していくことが誠実に履行された場合にのみ肯定されうるものという性格を有している」。国は1991~93年の成田空港問題シンポジウム・同円卓会議で、それまでの国の一方的な空港づくりを深く反省し、計画段階から被害を受ける地域・住民個々に案を提示し話し合い理解・協力を得て大綱を決定するという手法に空港づくりのやり方を変えるとした。しかし、2015~16年の「更なる機能強化」のための4者協は4回とも、住民の話し合い参加どころか傍聴もできない密室審議だった。「騒音問題に関して、成田空港の一定の『公共性』を肯定するためには、最低限、騒音問題についての住民との話し合いとそれによる問題解決の手続きが必要であったにもかかわらず、被告はかかる手続きを一切尊重せず、かつ、周辺住民の意見を取り上げることをしないまま、原告ら周辺住民に多大な被害をおよぼす航空機騒音を一方的に発生させ続けている」。「この一点からだけでも原告らの受忍限度は被告の成田空港としての『公共性』を大きく超えているといえるのである」と。以下、(2)被告による航空機の運航は基本的に私企業の営利行為であること。(3)夜間の航空機の飛行は内陸地に設けたことにより当然に制約されること。(4)内陸空港である成田空港は騒音を夜間に飛行機を運航する「公共性」や「公益上の必要性はないこと」。(5)被告の防音対策は極めて不十分であること。(6)原告らが受けている利益は、原告らが受けている騒音被害に比べ極めてわずかであること。(7)大阪国際空港夜間飛行禁止等請求事件の控訴審判決及び厚木基地夜間飛行差止等請求事件の控訴審判決について。これらを積み重ねて、3、結語で「侵害行為の公共性等を考慮しても、なお、原告らの被害はその受忍の限度を大きく超えているということができるのである」。(以上、「」内の太字部分はそれぞれの準備書面からの引用である。)

行訴・民訴とも被告側の手前勝手で無責任な主張を各公判ごとにくつがえしてきたこの半年間。何よりも毎回の公判ごとの原告意見陳述が、具体的に騒音による生活妨害や睡眠妨害を裁判官らに分かっていただく大きな武器となっています。その意見陳述全文とその日の弁護団口頭弁論(部分抜粋)をのせた公判資料も待っています。痛快でもあり面白い裁判です。いつでも傍聴にきて下さい。


第一回行政訴訟裁判(口頭弁論)

第一回行政訴訟裁判(口頭弁論)が11月28日(火)14時30分から千葉地裁601号法廷で行われました。

国側は発着時間は国、県、NAAと四者協議会の合意のもとに決めた事なので「国土交通大臣が指定した時間では無い」などと主張し却下を求めていた。

この日、我々原告の代表の成田市、芝山町、横芝光町、茨城県稲敷市の4名が映像を使い意見陳述を行なった。その中で団長の加藤は「成田空港建設は国策で行われてきました、今回の機能強化策も国策で行われている事に間違いありません」また「すべての事は成田空港の都合であって、騒音下住民の都合で決まった事は一つも無い! 深夜0時に轟音とともに飛行機を飛ばす事は人道的では無い! これ以上の航空機騒音公害は限度の限界です」と主張した。

その後「原告主張の要害」を海渡弁護団長が述べた後「全ての責任を成田空港会社に押し付けている事は、まさしく無責任の謗りを免れない」と述べた。

岡山裁判長は却下を求める国側に対し「実態に伴う答弁を出せないなら中間判決を検討せざるを得ない」とした。


次回は令和6年3月19日(火)千葉地裁


記者会見ダイジェスト(音声のみ)


口頭弁論 (行政)

令和5年(行ウ) 第22号 航空機の夜間飛行差止等請求事件

原告 : 加藤 茂 ほか14名

被告 : 国 (処分行政庁、国土交通大臣)

千葉地方裁判所 11月28日(火) 14時30分〜16時


提訴

2023年3月31日に弁護団により訴状を千葉地方裁判所に提出いたしました。

訴状は95ページになります。その一部を掲載いたします。